ロクサンドラ・アンサンブルはギリシャ第二の都市テッサロニキのバンド。ベース奏者のルーカス・メタックサスとアラブ系撥弦楽器カーヌーン奏者のディミトリス・ヴァスィリアディスの二人によって1997年に結成された。もっとも、後者のディミトリスはバンド結成後しばらくしてバンドから離れた。現在は常に8人のバンドメンバーが演奏する。
ギリシャの女流作家マリア・ヨルダニドウ(1897~1989年)が1962年に著した小説『ロクサンドラ』―コンスタンティノープル(現イスタンブール)で暮らすギリシャ人の生活を描いた内容の小説―の主人公の名ロクサンドラが、バンド名のよりどころである。
多様性に富むギリシャの伝統音楽を基礎に、それらを現代風にアレンジした曲をロクサンドラ・アンサンブルは主に演奏する。ギリシャの大衆歌曲テベティコ、ロマ民族の音楽、ギリシャの伝統的民族音楽、オスマン帝国のクラシック音楽あるいはトルコの民族音楽、セファルディ系ユダヤ人の音楽、またコーカサス山脈やバルカン半島の伝統音楽の影響もロクサンドラ・アンサンブルは受けている。その音楽を演じるためクリネット、ドラムや電気ベースのような近代的な楽器だけでなく、伝統的なアラブ系撥弦楽器のカーヌーンやウードなどもロクサンドラ・アンサンブルは用いている。
ロクサンドラ・アンサンブルはすでに数枚のアルバムをリリースした。最初のアルバム〈シェドン・オポス・パリア(「あたかも過去のよう」〉は2006年のリリース。そのアルバムはエーゲ海に面するトルコ西部の都市スミュルナ(現在のイズミル)やイスタンブールで暮らすキリシャ系少数民族の20世紀の音楽を主な題材にした。2枚目のアルバム〈メイハネ・カフェ・アマン(「居酒屋カフェ・アマン」)〉は2011年のリリースで、そのアルバムは2012年9月にワールド・ミュージック・ヨーロッパ・チャートの第8位、そして同年の年間チャートの第41位にランクされた。何人もの世界的に有名なゲスト・ミュージシャンもそのアルバムに登場している。ソクラティス・シノプロス、ニコス・アンド・ジャセミ・サラグダス、カテリーナ・パパドポル、アレティ・ケメティ、パナジョティス・ラレツァス、テオドーラ・アタナシゥス、エフレン・ロペスやブレナ・マッククリモン等々。
3枚目のアルバム〈イン・トランジシオン(「移り変わりつつある」〉は2018年にリリースされた。ロクサンドラ・アンサンブルのバンドメンバーが作曲した曲も含まれるそのアルバムは、ワーロド・ミュージック専門のスイスのレコード会社ダリット・ミュージックがリリースした。そのアルバムも注目の的になり、2018年5月にワールド・ミュージック・ヨーロッパ・チャートの第3位にランクされた。
ロクサンドラ・アンサンブルのバンドメンバー(個人的にまたはグループとして)はここ数年、さまざまな異なった芸術家と協同していろいろなプロジェクトに関わっている。ロッス・デイリー、ジアド・ラジャブ、チコ・フリーマン、クドスィ・エルグーナ、カリオフィリス・ドイツィディス、ドムナ・サミウ、クロニス・アイドニディス、フリストス・ツィアムリス、ニコス・キプルゴス、ヨルゴス・ダラーラス、エレニ・ツィリゴプル、エレニ・ヴィタリ、エレニ・カラインドル、トーマス・コロヴィーニス、ソル・ハサンなど、日本であまり知られていない音楽家や歌手なども含まれる。繊細な感覚と畏敬の念をもって各地の伝統音楽を現代風に蘇らせているロクサンドラ・アンサンブルは、バンドメンバーの祖国ギリシャだけでなく、ヨーロッパ各地で高い評価を受けている。ロクサンドラ・アンサンブルのライヴ演奏も人気があり、ギリシャ国内はもちろんのこと、諸外国でも定期的なコンサートを演奏する。
Giorgos Michailidis - Violine
Ria Ellinidou - vocals
Thanasis Koulentianos - kanun
Loukas Metaxas – bass / vocals
Dimitris Panagoulias – percussion
Kyriakos Tapakis - oud
Text: Robert Lippuner / Global Music Network
Translation: Martin Kaneko
References:
https://www.facebook.com/Loxandra.Ensemble/
http://www.dalit-music.com/de/allartist/90-artists/106-lox